【伊勢屋】70年にわたり巣鴨で愛される塩大福。変えないことが世代を超えたご贔屓につながる|ぐるり東京

2026-08-18 HaiPress

やわらかな塩味がすっきりした甘さを引き立てる塩大福1個200円。

巣鴨と言えば、とげぬき地蔵尊(高岩寺(こうがんじ))。その門前の地蔵通り商店街入口にある伊勢屋には、看板商品の塩大福をはじめ、餅菓子や団子などを求めてしばしば行列ができる。なにがそんなに人を惹きつけるのだろう。そもそも塩大福とは、甘いのか塩っぱいのか? 70年以上守られる味を訪ねた。

しっかりした弾力と、やさしい塩の風味

20種類以上の和菓子やおこわが並んでいて、迷ってしまう。

道路に面した店のショーケースには、20種類を超える和菓子やおこわ、のり巻きにいなり寿司。つい、あれもこれもと買いたくなってしまう品揃えだ。なかでも塩大福が最も評判だという。それならまずそれを味わってみなければ。

大福は、上品に黒文字で切り分けるより、指でつまんでかぶりつくのが正解だ。歯を入れると、これがなかなかの弾力。餅の厚みもある。同じ大福という名でも、あんこが透けて見えるような商品もあるが、これぞ餅菓子の極みだ。

五目いなり130円と赤飯おにぎり160円。山菜おこわや巻き寿司などもある。甘いものだけでないのがうれしい。

口の中でしっかり噛んでいくと、中の粒あんと餅が混ざり合って、ちょうどいい具合になってくる。それで、塩は?

確かに、塩味を感じる。しかし、まったく尖った塩っぱさではない。むしろ、あんこの甘さをマイルドに包んでくれているようだ。小豆を煮るときに塩をほんの少量加えるのは、対比効果で甘味を際立たせるといわれているが、この塩大福の塩は、甘味の対極にあるのではなく、砂糖の甘さや餅を噛んでいるうちに出てくる甘味を引き出して、なじませる役割を果たしているようだ。「塩○○」という和菓子はほかにもあるが、こんな感覚は初めてだ。聞けば長崎で海水から作る天然塩を使っているというので、自然の塩ならではの風味がいい働きをしているのかもしれない。

厚い餅にあんこもびっしり入っていて、かなりのボリュームだが、もう1個食べたくなってしまうのは、このやさしい塩の誘惑だ。

職人の技と経験で生み出される大福などの商品

伊勢屋二代目の佐藤幸子さん。製造から販売まで、店全体に目を配っている。

「杵搗きでもち米100%の大福は通年で4種類あって、これが粒あんで甘さ控えめの塩大福。豆大福は、塩の入っていない甘いこしあん。こしあんに黒いすりごまを練り合わせたごま大福は、お餅にもごまを入れています。この3種類だったのですが、なにか新しい商品をと会議したときに『塩豆もいいんじゃない?』と考えたのが塩豆大福です。ちょうど春に発売したし、豆大福と見分けをつけるために桜色にしました。そのほかに、12~2月頃限定で粟大福というのがあります。これは塩大福と同じあんが入っていて、栗の色が出た黄色です」

説明してくださったのは、伊勢屋二代目になる佐藤幸子(さちこ)さんだ。昔から変わらぬ味を守ってきて、もち米、小豆、砂糖、塩、豆大福なら赤エンドウと、それだけを使って毎日早朝から作っているのだという。小豆と赤エンドウは、北海道産のものを使っている。

「うちの大福は添加物など入れていないので、当日中に食べていただくのがいちばん。ですから、お客さんの流れを見て、裏の工場に言って追加してもらって売り切る。お地蔵さんの日にはたくさん売れるのはわかっているし、近くでイベントがあるとか、お天気とか。それは、お寿司やごはんものも同じです」

お地蔵さんの日というのは、高岩寺の縁日のことで、毎月4、14、24と4のつく日には何万人、初地蔵ともなると10万人もの人がお参りに訪れるのだ。それでも、幸子さんがお嫁に来た頃には露店が200軒も並んだのが、最近ではだいぶ減ってしまったという。

大福にする餅も、もち米の性質が時期によって変わったり、その日の気温や湿度にも影響されたりするし、豆入りの餅は豆を潰さないよう、偏らないように柔らかめにするなど、職人の経験に基づく微調整が欠かせない。それは団子も、饅頭も同様だ。

この店だけで購入できる味が、次の世代まで

大福は4種類。桜色が塩豆大福。時計回りに、塩大福、ごま大福、豆大福。どれも1個200円だ。冬場には粟大福も加わる。

伊勢屋は、昭和30年(1955)7月5日に開店した。初代が門前仲町にある伊勢屋の女将の弟だった縁で、福島から上京。和菓子作りを覚え、従妹と結婚したのを機に巣鴨に店を持った。門前仲町も富岡八幡宮の門前町だが、ここ巣鴨も隣の六地蔵で知られる眞性寺(しんしょうじ)やとげ抜き地蔵尊の高岩寺の参詣客が集まることが立地選定の決め手だったのだろう。当初は17坪の店だったが、隣の蕎麦店が店を閉じるのを機に拡張した。

当初は何が売れるかと試行錯誤したが、創業時から変わらず親しまれているのが塩大福と豆大福だ。今も交流の続く門前仲町の伊勢屋はデパート展開などしているが、巣鴨では卸売りはせず、支店も出さず、ここだけで製造・販売している。

「前は食堂で食べられるようにしたり、お赤飯やおこわに合わせてお惣菜も作ったりしていたのですが、長く働いていた人が高齢で引退するなどで手が足りないので、今はお店での販売に集中しています」

とはいえ、ご長男、ご次男が製造を受け持っていて、次の代も安泰だ。

巣鴨が若年層にもクールでなじみやすい街に

2個以上買った人には、大福の保存法や食べ方の紙を貼り付けてくれる。

お客さんには、近所の常連さんもいれば、遠くから長年通ってくる人もいる。子どもの成長を見られたり、「おばあちゃんが買ってきてくれた大福だ」と買いに来てくれる若い人がいたり。近年では外国人も多く、「モチ、ドレ?」とやってきて、スマートフォンの写真を見せたり翻訳機能を使ったり、上手に買い物していくという。

大福を2個以上買った人には、冷凍保存する方法などを書いた紙を付けているが、これはお客さんから教わったそうだ。

「アメリカ在住の女性がたくさん買って、これから帰るというので『硬くなってしまうのでは?』と心配したら、『すぐにラップに包んで冷凍しておくと、自然解凍でそのまま食べられるんです』と。早速実験してみたら、ほんとうに元通りに食べられるので、これは他のお客さんにも伝えなきゃと、印刷して貼るようにしたんです。お客さんと、そんな風に交流できるのが楽しいんです」

巣鴨は「おばあちゃんの原宿」といわれて高齢者の街という印象だったが、だんだんと年齢層が下がってきているというのが意外だった。時が経てば自然と来訪者も年をとるはずだが、逆に60・50代が増え、40代が来るようになり、もっと若い人も買い物に来るのだと。近隣にマンションが増えて若年層が入居したり、ビビッドな色のヘアカラーの有名店が出店したり、テレビ番組のロケや芸能人のYouTubeで巣鴨が紹介されて、「○○さんが食べたのはどれですか?」と目を輝かせて訪ねてきたり。そんなことが重なっているのだろう。

時代とともに変化して幅広い年齢層を受け入れながら、伊勢屋では創業以来70年余、変わらぬ商いを守り、若い世代にも昔からの味を伝えている。


<今回の取材先>

巣鴨駅から高岩寺へ行く人は誰もが通る、地蔵通り商店街の入口にある。

伊勢屋

昭和30年(1955)創業。JR山手線巣鴨駅から徒歩5分、都営三田線巣鴨駅から徒歩3分。製造はお菓子が5人とごはんもの4人、販売は6人で担当している。支払いは現金のみ。発送はしていない。


<データ>


住所東京都豊島区巣鴨3-21-17


電話03-3917-3580


営業時間 9:00~18:00


定休日月5回不定休、その他休日はインスタグラムで要確認


Instagramhttps://www.instagram.com/sugamo_iseya/

※掲載したお店や施設の臨時休業および年末年始・ゴールデンウイーク・お盆休みは営業時間などが変更になる場合がございます。事前にご確認ください。


※2026年8月18日時点での情報です。


※料金は原則的に税込み金額表示です。

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