「教えない」がカギ? 「シブヤ未来科」の現場で見たものとは 渋谷区立小中学校で「探究学習」の時間倍増

2024-08-16 HaiPress

全国の小中学校と高校で行われている「探究学習」。受け身になりがちな教科学習と違い、子どもたちがそれぞれの興味を掘り下げ、主体的な課題解決を目指す。渋谷区は本年度から全区立小中で、教科の授業を減らして総合学習の時間を倍増し、「シブヤ未来科」という探究学習の浸透に乗りだした。一体、どんなことをしているのか。

ファッションを探究するグループで「食べられる服」作りに励む生徒たち=いずれも渋谷区の区立代々木中学校で

◆ファッション、紙飛行機、ゲーム…各自の興味で課題設定

区立代々木中の調理室に食欲をそそる香りが漂う。生徒たちはジャガイモを揚げ、ご飯をおわん形に固めている。調理実習かと思いきや、ファッションの探究だという。「食べられる服を作っています。このご飯は帽子。ポテト?飾りです」と、悪戦苦闘しながら女子生徒が説明する。

同校の探究学習の主軸は、学年を超えた縦割りゼミ形式の「My探究」。生徒は14のテーマのうち興味に沿うグループに入り、自ら課題を見つけて問いを設定し、実地調査や情報収集をして答えを導き出す。

空気抵抗について調べるためにさまざまな形の紙飛行機を作る生徒

「会社四季報」をスクリーンに映した教室は、社会・経済グループ。「資本主義と共産主義、どちらが優れているかを考察しています」という1年の男子生徒(12)や、東京証券取引所の株式学習プログラムに取り組む子も。理科グループでは2年の男子生徒(14)が紙を折りながら「空気抵抗について調べたくて、いろんな形の紙飛行機を飛ばしています」。

アニメ・映像グループで「みんなが夢中になるゲーム」を作りたいという1年の男子生徒(13)は校内でアンケートをし、没入できる物語性が重要だと分かったという。「人を楽しませる内容こそ一番。パズルを盛り込む、敵を倒すだけでなく逃がす選択もできる、ラスボス(最後の敵)の正体が実は主人公の親友…なんて考えています」

◆「受け身の一斉授業からの脱却」自分の力で解決探る

授業の開始時、その日に取り組むことを学習用端末に配信された記録用シートに入力する

どの学年で何を教えるかや授業のコマ数は、文部科学省が学習指導要領で定めており、探究学習は「主体的、対話的で深い学び」を掲げる現行指導要領で重視されている。渋谷区は本年度から同省の「授業時数特例校制度」を利用し、教科の授業を減らして総合学習に充て、「シブヤ未来科」を展開。時間は全学年で昨年度からほぼ倍増し、中3だと年146コマだ。

「みんなが夢中になる、物語性のあるゲーム」の制作画面

「受け身の一斉授業からの脱却」と、区教育委員会教育指導課の安部忍課長は狙いを語る。教科学習の不足が気がかりだが、「1人1台配備した学習用端末で基礎学力の定着を図る。個々の理解度に応じて人工知能(AI)が作ったドリルも活用している。保護者の心配の声には丁寧に説明している」とする。

教員が探究学習で心掛けるのは、指導しないこと。代々木中の山本茂浩校長は「教員はつい教えたくなる。でも、生徒の興味をつぶさず、他の見方やヒントにとどめるのが肝心」。教室の外は「正解」が一つではないことばかり。「社会では予想しないことも起きる。教科で学ぶことと社会を結び付けて『本当の学力』にし、自分で見つけた課題の解決策を実行する力をつけ、立ち向かってほしい」

授業時数特例校学習指導要領で示した各教科の授業のコマ数を学校の裁量で最大1割減らし、その分を他の教科に上乗せできる制度。2022年度に始まった。教科横断や探究学習の促進につなげる狙い。コマ数が減った教科でも指導要領が定める学習内容は教えるなどの条件がある。文科省によると今年4月時点で104校指定されている。

生徒たちはその日の取り組みと次回の予定を毎回「振り返りシート」に記入し、教員のチェックを受ける=一部画像加工

◆文と写真・中沢佳子

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